
大屋根リング
と
民間パビリオン
2025年の大阪・関西万博。
「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマのもと、世界中からパビリオンが集結します。
なかでも注目したいのが、日本企業や建築家たちが手がける民間パビリオンと、
会場全体を包み込む巨大木造建築「大屋根リング」です。
今回は、建築好きの視点から、主要施設やシグネチャーパビリオンを中心にまとめました。
- ■ 大屋根リング ― 会場全体を包む“木の輪”
- ■ 静けさの森 ― 自然と建築の境界をなくす
- ■ null²(ヌルヌル) ― デジタルと身体が交わる建築
- ■ いのちめぐる冒険 ― 五感で感じる没入型体験
- ■ いのちの未来 ― ロボットと人間のあいだにある生命
- ■ 大阪ヘルスケアパビリオン ― 健康×デザインの融合
- ■ NTTパビリオン “Synchrony” ― データが形になる建築
- ■ 日本館 ― 伝統と未来をつなぐ象徴的デザイン
- ■ パナソニックパビリオン “ノモの樹”
- ■ EXPOホール ― 未来のステージ空間
- ■ ブルーオーシャンドーム ― 海と生命のつながり
- ■ よしもと館 ― エンタメ×建築の新しいかたち
- まとめ ― 建築で描く「いのちの地図」
■ 大屋根リング ― 会場全体を包む“木の輪”

会場の象徴となるのが、建築家・藤本壮介による「大屋根リング」。
直径約675メートル、高さ最大20メートルに及ぶ世界最大級の木造建築で、
国産材を中心にした木構造が会場をぐるりと囲みます。


リングの上部は歩行可能な「スカイウォーク」になっており、
空中散歩のように万博会場を一望できる設計。
下部は木陰のような滞留空間で、夏の強い日差しをやわらげてくれます。



完成後には「世界最大の木造建築」としてギネス登録も話題に。
伝統的な木工技術と最新の構造工学を融合した、まさに日本らしい建築の象徴です。
■ 静けさの森 ― 自然と建築の境界をなくす

「静けさの森」は、医師で社会学者の宮田裕章がプロデュースするテーマ空間。
建築というより、自然そのものを設計したような場です。
木々の間に配置された回廊や水盤が、来場者の足音や呼吸を吸い込み、
人工物と自然の境界をあいまいにしていきます。
屋根や壁を極力なくし、光と風が通り抜ける構造は、
建築というより“体験”をデザインしているよう。
人と自然の共生を静かに語る空間です。
■ null²(ヌルヌル) ― デジタルと身体が交わる建築

アーティスト落合陽一による「null²」は、
最先端デジタルと物理空間が融合した実験的なパビリオン。
設計はNOIZ architects。

来場者の動きや声がリアルタイムで空間に反映され、
まるで“身体が建築の一部になる”ような体験ができます。

滑らかに湾曲する構造体や反射面が特徴で、
従来の建築概念を超えた、“動く建築”とも言える存在です。
■ いのちめぐる冒険 ― 五感で感じる没入型体験

演出家の河森正治が手がける「いのちめぐる冒険」は、
映像・音・振動を組み合わせた五感体験型パビリオン。
建築そのものがステージのように動き、
“いのち”のリズムを身体で感じられる仕掛けになっています。

外観は白く有機的なフォルムで、内部は劇場空間。
プロジェクションと立体音響が一体化し、まるで生命の内部を旅するような演出です。
■ いのちの未来 ― ロボットと人間のあいだにある生命

ロボット研究者の石黒浩による「いのちの未来」館。
AIやアンドロイドと人間の共存をテーマに、
“生命とは何か”という問いを建築と展示で投げかけます。
建築はシンプルながら、未来的でミラー素材が印象的。
来場者の姿が反射し、自分自身が展示の一部になる構成です。
建築とテクノロジーの境界線が曖昧になる、不思議な没入感があります。
■ 大阪ヘルスケアパビリオン ― 健康×デザインの融合

大阪府・市と関西経済界が共同出展する「大阪ヘルスケアパビリオン」。
建築は木とガラスを基調にした明るい空間で、
“ウェルビーイング”を体感できる展示や体験が並びます。

健康・医療・食・運動など、
大阪らしい“人間味のある未来社会”を提案する拠点として注目の一つです。
■ NTTパビリオン “Synchrony” ― データが形になる建築

NTTのパビリオンは、データを可視化する建築。
膨大な通信データやAI解析をもとに、
光や音の波がリアルタイムに変化する構造です。
内部では人と人、都市と自然が「同期(Synchrony)」する演出があり、
デジタルを“感じる”ための空間デザインとなっています。
■ 日本館 ― 伝統と未来をつなぐ象徴的デザイン

日本政府が出展する「日本館」は、
木格子と白壁が組み合わされた伝統×未来デザイン。
「共創の未来社会」をテーマに、
日本らしい建築美と最先端技術が融合しています。
館内では日本の文化・技術・自然観を体感でき、
まさに“未来への茶室”のような静けさと精密さを兼ね備えた空間です。
■ パナソニックパビリオン “ノモの樹”

パナソニックグループが手がける「ノモの樹」は、
地球全体の生命循環を象徴する巨大な木の建築。
環境配慮型素材と再生可能エネルギーを導入し、
建築自体が“呼吸する”ような設計になっています。
内部では映像と音響が連動し、
“地球と人間の共生”を体感できる空間が広がります。
■ EXPOホール ― 未来のステージ空間

「EXPOホール」は、コンサートや講演、パフォーマンスなどを行う多目的ホール。
音響設計に最新技術が使われており、
建築的にも大屋根リングと調和するデザインが採用されています。
外壁には再利用材を用い、環境負荷を抑えた構造。
イベント時は照明演出によって夜間も美しく浮かび上がります。
■ ブルーオーシャンドーム ― 海と生命のつながり

海をテーマにした半球状のドーム型建築。
内部には青を基調とした照明と水音の演出があり、
“地球の70%を覆う海”を象徴する幻想的な空間です。
建築的には軽量構造を採用し、
内部環境を一定に保つ工夫が凝らされています。
■ よしもと館 ― エンタメ×建築の新しいかたち

吉本興業による「よしもと館」は、
笑いとエンターテインメントをテーマにした体験型パビリオン。
外観は明るい色彩と不規則なフォルムで、
どこから見ても楽しくなるデザインです。
建築的には軽量鉄骨とモジュラー構造を組み合わせ、
会期後のリユースも見据えています。
エンタメと建築が融合した“遊びの建築”といえるでしょう。
まとめ ― 建築で描く「いのちの地図」

大阪万博の建築群は、どれも単なる展示の“箱”ではなく、
テーマそのものを建築で表現した作品です。
木の香りが漂う大屋根リング、
自然と一体化する静けさの森、
データと身体が交わるnull²――
それぞれが異なる「未来のいのち」のかたちを見せています。
建築を巡るだけでも、十分に万博の思想を感じられる。
そう思わせてくれるのが、この大阪・関西万博の魅力です。


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